飲食店におけるクレンリネスとは? 重要性や実施の手順・注意点も紹介
飲食店を経営している方ならば、おそらく一度は聞いたことがあるのが、「クレンリネス」という言葉です。クレンリネスは、集客にも大きく関係します。掃除が重要だということはわかっているものの、掃除の手順やポイントがわからない方もいるかもしれません。
そこでこの記事では、クレンリネスの重要性や基本知識、実施の手順、注意点などについてまとめました。クレンリネスへの理解を深めて、集客力アップを目指しましょう。
クレンリネスとは
クレンリネスは、「衛生的に清潔な状態が維持されていること」を指します。時間が空いたときに掃除できる人が掃除するのではなく、決められた人が決められた箇所を決められた順番で清掃し、それを第三者がチェックするのがクレンリネスです。
目的はお客様の健康と安全を守ることで、食中毒の予防もそのひとつです。万が一、店で食中毒などが発生した場合、お店にとって致命的なダメージとなります。
場合によっては、廃業にまで追い込まれるケースもあるかもしれません。そのため、安定した経営を長く続けていくためにも、クレンリネスの徹底は重要なのです。
飲食店におけるクレンリネスは、清潔な状態の店をただ維持すればよいわけではありません。従業員の身だしなみや調理器具・食器などの片付け、さらには外観・店舗周辺の掃除なども必要です。その中のどれかひとつでも欠けると、十分ではありません。
クリンネスとの違い
クレンリネスとクリンネスを混同する人がいますが、クリンネスは単に「清掃をして綺麗にすること」です。それに対して、クレンリネスは「従業員の身だしなみも整い、衛生的に清潔な状態が維持されていること」を意味します。
例えば、テーブルの汚れを拭き取ったり、落ちているゴミを拾ったりするのはクリンネスです。つまり、汚れていなかったらそのままということになります。しかし、クレンリネスは、汚れていなくても清掃したり、殺菌消毒で細菌の発生を防いだりします。
飲食店でクレンリネスが重要なのはなぜ?
「清潔感」は、お客様が店を選ぶ基準のひとつです。もし入店時に、ホールの床やテーブルが汚れていたりゴミが散らかっていたりしたら、お客様はまた利用したいと思うでしょうか。また、従業員のユニフォームの汚れ、店内が臭うなども同様です。
お客様は、店内の掃除が行き届いているかを見て、良い店かどうか判断します。繁盛していない店は、クレンリネスができていません。どんなに料理が美味しくて接客が良くても、清潔ではない店を選ぶお客様は少ないでしょう。
一方で繁盛店は、お客様の目に付くところだけでなく、目に見えないところも隅々まで掃除が行き届いています。クレンリネスを徹底することは、店や商品の価値を高めるだけでなく、集客にもつながるのです。
マクドナルドもクレンリネスを重視
皆さんもご存知のマクドナルドでも、クレンリネスを徹底的に指導します。飲食店経営の原則は、QSC(Qはクオリティー、S はサービス、Cはクレンリネス)の3Sです。現場ではクレンリネスを徹底的に指導します。
さらに、クレンリネス強化月間を設けて、常にクレンリネスの高い基準を維持できるように努めています。マクドナルドの人気は、クレンリネスに対する企業努力も影響しているといえるでしょう。
飲食店におけるクレンリネスの基本
店には、日々汚れが蓄積されています。汚れを溜めないように日々清掃して、綺麗な状態を維持しなければなりません。クレンリネスの基本は次の4つです。
- 手洗い
- 清掃
- 整理整頓
- 身だしなみ
これらの重要性や実行方法について解説していきます。
手洗い
手洗いは、クレンリネスの基本中の基本です。手洗いのタイミングは、出勤時・作業変更時・トイレ後・休憩後などです。そのほか、汚れたものに触れたときや生鮮食材に触れた後なども手洗いが必要です。
指先や手のひら、手の甲、指の間などにも、しっかりと消毒薬をすりこんでください。1時間に1度は手洗いをするようにしましょう。
手洗いがしっかりとできていないと、そのほかのことを頑張っても細菌が発生・繁殖しやすくなってしまいます。手洗いをしっかり行うことがいかに重要か、スタッフに意識づけることが重要です。
清掃
清掃は、開店前・閉店後、営業中に行います。店の入口周りや床、テーブルや椅子、トイレのほか、壁や窓などを清掃し、お客様をお迎えする準備をします。
特に、客席やフロアはお客様が必ず目にするところなので、常に清潔にする必要があります。トイレは特にお客様が気にかけるポイントなので、日頃から綺麗にしておきましょう。
厨房はお客様には見えないですが、日々の調理で油ハネなど汚れが溜まりやすい箇所です。掃除を徹底していないと、汚れが蓄積し、食中毒の原因になることもあります。そのほかに、冷蔵庫や冷凍庫の掃除、排水口やグリストラップ、換気扇などの掃除もあります。
整理整頓
整理整頓も、クレンリネスに欠かせません。整理整頓すると、誰でもすぐに必要なものを取り出すことができます。まず、必要なモノと不要なモノを選別し、不要なモノは捨ててください。次に、モノの置き場所や置き方を決めます。使った後は戻すことを徹底しましょう。
必要な食材をすぐに取り出せるように、食材の一覧表を食材倉庫の入口に掲示しておくと便利です。よく使う食材や食器は取り出しやすい中段などに置くことをおすすめします。整理整頓を徹底すると無駄な動きがなくなり、作業のスピードも向上します。
身だしなみ
身だしなみも、クレンリネスの一部です。スタッフが不潔だったりユニフォームが汚れていたりすると、せっかく店が綺麗な状態でも、お客様に不快感を与えてしまいます。
身だしなみもお客様に対するマナーだと認識し、爪は短く清潔にする、頭髪を清潔に保つ、指輪や時計は外すなどはもちろん、店で決めたルールを徹底して守りましょう。
【飲食店向け】クレンリネスの実施手順
それでは、どのようにクレンリネスを実施すればよいのでしょうか。ここでは、以下の実施手順を解説します。
- 店の基準とマニュアルを作成する
- スタッフの意識を向上させる
- お客様の目線を意識する
店の基準とマニュアルを作成する
まず、店の基準とマニュアルを作成します。作業手順を記載したマニュアルがあると、スタッフ全員が正しい方法で同じように掃除することができます。スタッフ全員が情報共有でき、いざというときすぐに確認できるのもポイントです。
マニュアルには、まず、清掃の意味や目的を記載します。1人ひとりが清掃の意味や目的を把握した上で清掃をすると、効果を実感しやすくなるでしょう。
次に、清掃道具、清掃手順、清掃後の状態などを記載します。清掃道具は、スポンジひとつでも使う箇所によって使い分けが必要です。どの場所にどれを使うのかを記し、混同しないようにしましょう。
そして、飲食店にはグリストラップなど独自の設備もあるので、手順をわかりやすく説明することがより重要です。さらに、清掃後にどのような状態が最適なのか、わかりやすく表記します。マニュアルの内容は、定期的に見直し、必要に応じて随時改善してください。
スタッフの意識を向上させる
オーナーや店長、社員のみが、クレンリネスへの意識が高いだけでは意味がありません。アルバイトやパートにもクレンリネスの重要性を伝え、意識を高めてもらう必要があります。
スタッフの1人ひとりが意識を高く持つことで、お客様へ細やかな気遣いができるようになり、クレンリネスだけでなくサービス全体の質が高まっていくでしょう。
お客様の目線を意識する
お客様の目線を意識することも、重要なポイントです。スタッフの目線とお客様の目線は違うので、見えているようで見えてないものはたくさんあります。
店内に着席して飲食したり、お店の外から眺めてみたりするのもおすすめです。お客様の目線を意識してお店を見てみると、気付かなかった埃や汚れなどを発見することもあるでしょう。常に、お客様目線でチェックすることを心がけてください。
クリンリネスのマニュアル作成ポイント
クリンリネスのマニュアル作成時には、以下のポイントを理解しておくことが大切です。
- HACCPに基づく衛生管理
- 衛生管理のポイントを把握
詳しく確認していきましょう。
HACCPに基づく衛生管理
改正食品衛生法が適用されたことで、2021年6月からすべての食品等事業者に「HACCP(ハサップ)」に沿った衛生管理が義務化されました。
HACCPとは、食品管理の工程ごとに確認、記録を行う衛生手法です。この手法を用いると、製造工程で異物混入などの問題が発生した際、出荷される前に対処できるため、食品管理の効率が良くなります。
万が一、飲食店でHACCPに沿った衛生管理が行われていないと、都道府県が定める条例によって罰則を受ける可能性があるので注意してください。最悪の場合、営業許可の更新ができなくなることもあります。
衛生管理のポイントを把握
クレンリネスのマニュアルを作成するにあたり、衛生管理のポイントを押さえておく必要があります。衛生管理のポイントは、主に以下の3つです。
- お客様が使用するものの形成管理
- スタッフの衛生管理
- 厨房の衛生管理
ひとつめは、お客様が使用するものの形成管理です。客席やカトラリー、トイレの汚れもチェックしてください。
次に、スタッフの衛生管理です。制服に着替え、作業靴へ履き替えて、外部からの汚れや細菌を持ちこまないようにしましょう。そして、体調管理はもちろんのこと、手指に傷があるときは手袋を着用するのが基本です。
3つめは、厨房の衛生管理です。段ボールやゴミ箱には細菌が付着していることが多いため、調理場や冷蔵庫とは離して管理してください。そして、冷凍食材を解凍するときは、前日から冷蔵庫に移して解凍します。常温の室内に放置するのは、食中毒のリスクを高めるので避けてください。
クレンリネスを実施する際の注意点
クレンリネスを実施する際には、以下5つの注意点を押さえておく必要があります。
- 見えないところの清掃も徹底する
- 使いやすさと働きやすさを重視
- ニオイ対策も忘れずに
- 掃除する日時を決めておく
- 定期的な清掃や害虫駆除はプロに任せる
徹底するために、それぞれを正しく理解しておきましょう。
見えないところの清掃も徹底する
清掃は、目に見えるところだけでは不十分です。見えないところの清掃も、徹底してください。冷蔵庫の取っ手やドアノブ、机や椅子の脚の汚れなども、定期的に清掃しましょう。さらに、厨房やバックヤード、レジ裏など、お客様から見えない箇所の清掃も行います。
見えないからといって掃除をおざなりにしていると、店全体のクレンリネスも低下していってしまいます。日々、店の隅々まで清掃を徹底しましょう。
使いやすさと働きやすさを重視
クレンリネスの目的は、「お客様に喜ばれる店づくり」「従業員が働きやすい環境を整える」ことです。「お客様が使いやすいかどうか」を考え、机の上に置くものは必要最小限にしましょう。
机の上に調味料や販促物がごちゃごちゃと置いてあると、お客様にとっては邪魔でしかありません。店のこだわりやディスプレイよりも、お客様優先で考えてください。そして、従業員が働きやすいように、作業動線がスムーズになるようにモノを配置しましょう。
ニオイ対策も忘れずに
ニオイ対策も、クレンリネスの重要なポイントのひとつです。特に、トイレはニオイ対策が必要な箇所といえるでしょう。トイレタンク内や手洗い場のカビは、ニオイの元となるので、要注意です。消臭スプレーや芳香剤を置いたりするのも、おすすめです。
掃除する日時を決めておく
店内の箇所によっては、毎日掃除すべき箇所もあれば、週1回でもよい箇所もあります。箇所に合わせて、掃除する日時を決めておきましょう。
チェックシートに掃除する場所と日時を記入しておけば、掃除忘れのミス予防にもなります。もちろん、チェックシートに清掃完了のサインがあっても、ゴミや汚れを見つけたらその都度清掃してください。
定期的な清掃や害虫駆除はプロに任せる
グリストラップヤレンジフードなどの清掃は、自分たちでやってもなかなか満足のいく仕上がりにならないこともしばしばあります。上手に清掃できたと思っても、実際には汚れが落としきれていないことが多いです。
清掃業者の定期清掃サービスを活用すれば、清潔な店内を維持でき、空いた時間を有効活用できます。グリストラップヤレンジフードなどの清掃、床のワックスがけ、害虫駆除、エアコンの吹き出し口などの掃除もプロに任せるとよいでしょう。
飲食店におけるクレンリネスのまとめ
クレンリネスは、サービスの原点です。毎日店にいると、見慣れてしまっている汚れがあるかもしれません。店内をすみずみまで綺麗にするには、計画的な掃除が必要です。お客様が気持ちよく過ごせて、さらにスタッフの労働環境を整えることも心がけてください。
クレンリネスを徹底することで、従業員の意識も高まり、おもてなしの心をもってお客様をお迎えすることができます。店の売上アップにもつながるように、クレンリネスをしっかりと行いましょう。